「ロープ施工(ロープアクセス工法)」は、高所作業で用いられる作業技術のひとつです。仮設の足場や脚立、高所作業車を用いた作業方法と違い、安定した足場を必要としないのが特徴です。
本稿では、ロープ施工の概要を解説したうえで、そのメリットやデメリット、適している現場や安全対策についても解説していきます。
ロープ施工(ロープアクセス工法)とは?
ロープ施工(ロープアクセス工法)とは、ロープと機材を活用し、吊り下げられた状態で作業する工法のことです。上昇と下降を駆使して作業を迅速に進めることが可能で、ISO22846に準拠した産業用の資格があります。
ブランコ工法との違い
ブランコ工法は、「足場を設けずブランコのように上から吊り下げられながら作業する工法」を指します。ロープ施工との違いについて明確な基準が設けられているわけではないため、それぞれ同様の技術を指して用いられる場合もあるでしょう。
注目すべきは、その組織がどのような資格やライセンスを取得しているのか、どのような規格に準じた作業をしているのかという点です。ロープ施工、ロープアクセス工法、ブランコ工法、ロープアクセス、ブランコアクセスといった多様な呼び方に惑わされず、その技術の土台になっているものに着目することが大切です。
無足場工法との違い
無足場工法は、「足場を組まない工法」の総称として用いられます。無足場工法には高所作業車やゴンドラも含まれるため、ロープ施工よりも広い概念を指しているといえるでしょう。
ロープ施工のメリット
ロープ施工は、「足場がない」という特徴から数多くのメリットを得ることができます。
工事費用を抑えられる
足場を組み立てたり、点検車や高所作業車を用意したりといった準備には多額の費用を要します。そのため、軽度のメンテナンスだけが目的の場合は特に、大掛かりな機材や作業を必要とする工法は適していないでしょう。
全面改修といった大規模なメンテナンスでなければ、必要な機材が少なく、作業員も最低限の人数で済むロープ施工を活用することで、工事にかかる費用を最小限に抑えられます。
狭い場所でも作業できる
ロープ施工は狭い場所でも活用できる工法です。足場を組むためのスペースが確保できない場所や高所作業車が入れない場所であっても、最低限の隙間さえ確保できれば作業を遂行することが可能です。
工期を短縮できる
スピード感もロープ施工の大きな魅力です。足場を組み立てる必要がなく、わずかな機材を準備したらすぐに作業を開始できます。もちろん撤収にも時間はかかりません。
仮設足場の上を歩く場合に比べて上下左右の移動がスムーズなことから、作業員の機動力も上がります。作業自体にかかる時間を短縮できるので、漏水工事のような一刻を争うケースにも迅速な対応が可能です。
周囲に迷惑をかけない
足場を組み立てる音は、工事現場における騒音の代表的なものとしてよく挙げられます。とはいえ、仮設足場の設置にともなう金属音を抑えるのはなかなか難しく、工事の際に肩身の狭い思いをしたという依頼者の方も少なくないでしょう。
足場を必要としないロープ施工を活用すれば、騒音を必要最低限に抑えることができます。周囲に与えるストレスを軽減させることができるため、近隣との関係性を悪化させたくない方には願ってもない工法です。
足場がないことは当然、見た目にもいい影響を与えます。ロープ施工は工事中であってもほとんど景観を損ねないので、観光客が途絶えない建築物をメンテナンスしたい場合に最適です。
犯罪対策になる
建物の周りを囲んで設置する仮設足場は、犯罪に利用されてしまうことがあります。ロープ施工を活用することは結果的に、足場を利用した盗撮や盗難、住居侵入といった犯罪行為の防止につながるでしょう。
ロープ施工のデメリット
ロープ施工をしっかりと捉えるうえでは、デメリットを知っておくことも大切です。適さないシチュエーションを知っておくことで、より効果的に活用できるでしょう。
対応できない環境や作業がある
ロープ施工は、14階以上のマンションやビルでの作業が認められていません。仮に高さの条件を満たしても、屋上にロープを設置できない場所(パラペットクランプの設置やアンカーの打ち込みもできない場合)や、吊り下げられた人が動けるスペースすら確保できない場所では作業しようがないでしょう。
また吊り下げられた状態で作業することから、強い踏ん張りが必要な作業や、広範囲にわたる作業とは相性が悪いです。作業効率が悪いばかりか費用も上がってしまう可能性があるため、作業内容がロープ施工に適したものかどうか事前によく検討しましょう。
※パラペットクランプ
パラペット(屋根や屋上に設けられた立ち上がり部分)を挟み込んで設置する器具。設置することでロープの吊り元にできる。
安全対策が重要
ロープ施工は足場がないぶん、しっかりとした安全対策が欠かせません。準備を疎かにすると作業員の命はもちろん、作業現場の下を歩く通行人の命まで危険に晒してしまうことになります。
高所からの落下は重大な事故につながる可能性が高いため、安全対策は強化が進んでいます。
ロープ施工における安全対策
ロープ施工には、機材と技術の両面から安全対策が施されています。
大前提として、ロープ施工では丈夫で安全性の高いロープや機材を使用しています。しかし、いくら質の高いものでも老朽化は避けられません。頻繁に点検し、常に万全の状態で使えるようにしておくことが重要とされています。
また、平成28年に改正された労働基準法により、安全対策の基準はより厳しくなりました。
たとえば、ロープ施工を行う作業員は、身体保持器具を取り付けた「メインロープ」のほかに、安全帯を取り付けるための「ライフライン」というロープを必ず設置しなければならなくなりました。ロープ施工に就く前の特別教育も設けられ、教育科目ごとに決められた時間分の「学科教育」や「実技教育」を受けることが義務付けられています。
このような安全対策をクリアすることは、ロープ施工に臨むうえでの最低条件に位置付けられています。
ロープ施工に適している現場
先述のメリットをふまえると、以下の3つの現場がロープ施工に適しているといえるでしょう。
・足場や高所作業車が使えない現場
・迅速な対応が求められる現場
・作業範囲が狭い現場 以下でそれぞれを解説していきます。
足場や高所作業車が使えない現場
ロープ施工は上から吊り下げられた状態で作業をするため、工事にあたって仮設足場はもとより広いスペースも必要としません。足場や高所作業車が使えない場所、たとえば極端に狭い場所や複雑な形状の現場でも、作業員ひとりが入れるスペース(40cm程度)があれば難なく作業することが可能です。
迅速な対応が求められる現場
足場の設置や事前の届出を必要としないロープ施工は、緊急で即時対応が必要な現場にも最適でしょう。作業員とロープや機材があればすぐに作業を開始でき、高い機動力で作業自体もスピーディーに進めます。
作業範囲が狭い現場
ロープ施工は、作業範囲が広すぎる現場と相性がよくありません。逆に作業範囲が狭い現場では、その機動力の高さで工期を縮め、準備の身軽さでコストを抑えてくれるでしょう。多様な工法を選べる状況であっても、現場の特徴によってはロープ施工が第一候補になりえます。
ロープ施工がコンパクトな工事を実現する
ロープ施工は、小規模の工事において力を発揮します。
上から吊り下げられるという独自の高所作業スタイルは、足場や高所作業車といった工法が使えない現場においてはとりわけ、頼りがいのある存在になるでしょう。総じて、工事の費用、作業範囲、工期といった要素をコンパクトにしたい場合に最適な工法といえます。
商用看板をロープ施工で設置するなら「株式会社玄美堂」
「高所に看板を設置したい」というシチュエーションにおいても、ロープ施工は効果的です。
埼玉県春日部市を拠点とする株式会社玄美堂は、商用看板の製作からロープ施工を用いた高所への設置までをワンストップで請け負っている会社です。国際ライセンス「IRATA」を取得していることから、高い技術力で安全かつ迅速なロープ施工が実現可能です。
看板のデザインや設置に関してお悩みがあれば、お問い合わせフォーム(https://sing-genbidou.com/contact/)やお電話(048-797-7607)からいかなることでもご相談ください。何もわからなくても構いません。“玄人”にしかない目線から、お客様のニーズに合わせた最適なご提案をさせていただきます。